これまで栽培管理アプリでは、施肥作業を記録できるようにしていました。
いつ、どのハウスに、どの肥料を何kg使ったか。
記録自体は残せていたので、それなりに便利だったのですが、実際に使っていると一つ不便なことがありました。
結局、この栽培で肥料を合計何kg使ったんだっけ?
ということです。
作業履歴を見れば、一回一回の施肥記録は確認できます。
でも、栽培期間全体でどれだけ投入したかを知ろうとすると、過去の記録を拾って自分で足し算する必要があります。
しかも、本当に知りたいのは肥料そのものの使用量だけではありません。
窒素やリン酸、カリをそれぞれ何kg投入したのか。
今回は、それを確認できる「肥料使用一覧」を作ることにしました。
まずは肥料マスタに成分を登録できるようにする
肥料使用一覧を作ろうとして、最初に気づいたのが肥料マスタの問題です。
これまでの肥料マスタには、
- 肥料名
- 種類(固形・液肥)
- メモ
などはありましたが、肝心の肥料成分を登録する項目がありませんでした。
例えば「有機入り肥料10-4-2」を100kg使用した場合。
肥料そのものは100kgですが、成分としては、
- 窒素(N):10kg
- リン酸(P₂O₅):4kg
- カリ(K₂O):2kg
です。
これを計算するには、肥料マスタに成分割合が必要です。
そこで、今回追加したのが次の5成分です。
| 成分 | 登録内容 |
|---|---|
| N | 窒素(%) |
| P₂O₅ | リン酸(%) |
| K₂O | カリ(%) |
| MgO | 苦土(%) |
| CaO | 石灰(%) |
窒素・リン酸・カリだけでもよかったのですが、実際には苦土や石灰を含む肥料も使っています。
せっかくなので、この5成分まで管理することにしました。
一方、微量要素まで全部管理しようとすると項目が増えすぎるので、今回は対象外です。
また、土壌改良剤や発根剤など、5成分を登録する必要がない資材もあります。
そのため、成分欄はすべて任意入力にしました。
肥料や資材の使用量は記録する。でも、成分がないものまで無理に数値を入れない。
という考え方です。
既存の肥料マスタにも成分値を入力し直しました。
これで、ようやく肥料使用一覧を作る準備ができました。

肥料使用一覧を新しく作った
今回のメインがこちらです。
これまでの「農薬使用一覧」と同じように、栽培期間とハウスを選択して、肥料の使用状況を確認できるページを追加しました。
例えば、
「2026年栽培(アスパラガス)」
を選択すると、その栽培期間に記録された施肥データを集計します。
さらにハウスを選べば、No.10だけ、No.11だけ、といった確認もできます。
表示するのは、
- 肥料名
- 肥料使用量(kg)
- N投入量(kg)
- P₂O₅投入量(kg)
- K₂O投入量(kg)
- MgO投入量(kg)
- CaO投入量(kg)
です。
成分量は、
肥料使用量 × 成分割合 ÷ 100
で計算しています。
例えば、10-4-2の肥料を40kg使ったなら、
- N:4kg
- P₂O₅:1.6kg
- K₂O:0.8kg
となります。
単純な計算ですが、これを施肥のたびに自分で計算して、さらに栽培期間全体で合算するとなると面倒です。
アプリなら、施肥記録をもとに自動で計算できます。

過去の施肥記録もそのまま使えた
今回よかったのは、これまで登録していた施肥データをそのまま使えたことです。
過去の作業履歴には、肥料名だけでなく、肥料マスタとの紐付けと使用量が残っていました。
そのため、今回肥料マスタに成分割合を追加したことで、過去の施肥記録についても成分量を計算できるようになりました。
過去のデータを一件ずつ修正する必要はありません。
例えば、以前登録した有機入り肥料や石灰資材も、今回登録した成分値を使って集計されています。
ただし、以前の施肥記録には「元肥」「追肥」の区別がありませんでした。
そこで今回から施肥登録時に元肥・追肥を選べるようにして、古い記録は「区分なし」として残しています。
元肥か追肥かを勝手に推測して振り分けることはしていません。
古い記録も含めて、すべてを「記録上の総投入量」に合算します。
ハウスごとの投入量も確認できる
今回の肥料使用一覧では、全ハウスの合計だけでなく、ハウスごとの集計もできるようにしました。
例えば、アスパラガスの2026年栽培で確認したところ、全ハウスの肥料使用量は、
1,963.2kg
でした。
一方、その中の1つのハウスを選ぶと、
242.4kg
となっています。
複数ハウスにまとめて施肥した場合でも、施肥登録時にハウスや畝へ使用量を振り分けて保存しているので、その記録を使ってハウス別に集計できます。
10a換算もできるようにした
さらに、特定のハウスを選んだ場合には、5成分の投入量を10a換算で表示するようにしました。
例えば今、栽培しているハウスは1棟あたり
6m × 50m = 300㎡
です。
このハウスの窒素投入量は、記録上11.37kgでした。
10a(1,000㎡)に換算すると、
11.37kg ÷ 300㎡ × 1,000㎡ ≒ 37.9kg/10a
となります。
実際の画面では、次のようになりました。
| 成分 | 10a換算投入量 |
|---|---|
| N | 37.89kg |
| P₂O₅ | 25.27kg |
| K₂O | 20.01kg |
| MgO | 4.88kg |
| CaO | 87.55kg |
こうして見ると、単に肥料を何kg使ったかだけでは分からなかったことが見えてきます。
特に石灰や苦土は、単独の資材だけでなく、複合肥料にも含まれています。
それぞれの資材を別々に見ていると気づきにくいのですが、成分として合算すると、実際にどれだけ投入したかが分かります。
もちろん、この数字だけで施肥量が多い・少ないと判断できるわけではありません。
土壌にどれだけ養分が残っているか、作物がどれだけ吸収するかも関係します。
それでも、施肥設計を考えるための材料にはなりそうです。
なお、福岡県野菜施肥基準によると、Nの施肥量が38kgなので、だいたい合ってるかな?ということが言えるとは思います。
施肥記録が、あとから使えるデータになった
これまでは、施肥を記録しても、基本的には作業履歴を振り返るためのものでした。
でも今回の改修で、
施肥を記録する
↓
肥料ごとの使用量を集計する
↓
5成分の投入量を計算する
↓
ハウスごとに10a換算する
という流れができました。
これなら、栽培が終わったあとに、
「今年は窒素をどれだけ投入したか」
「去年と比べて施肥量がどう違ったか」
「ハウスごとの投入量に違いはあったか」
といったことも確認できるはずです。
今後、収穫量や栽培結果と組み合わせれば、さらに使い道が増えるかもしれません。
アプリを作り始めた頃は、農作業を記録できれば十分だと思っていました。
でも実際に使っていると、記録を残すだけでは少し物足りなくなってきます。
せっかく入力したデータなら、あとから栽培に役立てたい。
今回の肥料使用一覧は、そのための機能になりそうです。
