アスパラガスの1年間

アスパラガスの1年。今の5月は「立茎(りっけい)」の季節

現在、アスパラガスは「立茎(りっけい)」という作業が終わり、子供(新芽)がぼちぼち出てきている時期
前のブログで、今はどちらかといえば閑散期という話をしたが、その理由が「立茎だから」といわれてもなかなかピンとは来ないとは思う。

似たような質問で「アスパラガスってどうやって作るの?」って聞かれたときに
「親を作って木になって…」なんて話をしても、当然ながら 「????」 となることがよくある。

と、いうことで自分ながらにまとめてみた。たとえ話が多いので学術的には違うかもしれないけど、そこは大目に見て頂きたい。


アスパラガスの“親”と“子”

スーパーでよく見かけるアスパラガス。
**あれはいわば「子供」**のようなもので、柔らかくてみずみずしく、まさに食べごろ。

でもそのアスパラを収穫せずに放っておくとどうなるか?、って言うところから話がスタートする。

実は、どんどん伸びていき、最終的には“木”のような姿になる。
これを農家では「親木」と呼び意図的に育てる作業を「立茎(りっけい)」といいます。


アスパラの一生を人間にたとえると…

春に土から出てきたばかりのアスパラが、まさに子供。


これを収穫せずに育てて、元気な「親」へと成長させるのが立茎。

そしてこの親が、6月ごろから“子供(収穫できるアスパラ)”を出し始めます
親もまだまだ元気で、6月末くらいから8月が一番収穫量が多い時期(繁忙期)になります。


老いと準備、そして再出発

夏を過ぎるころには、親もだんだん疲れてきます。
人間でいうと40代くらい。
出てくるアスパラの本数が減っていきます。

秋——10月ごろになると、親は老いを意識し始めます(人間でいう70代)
子供を出す力は弱まり、死を悟った親は最後の力で、根に栄養を蓄えます
これは、翌春に向けた大切なエネルギーの蓄積です。

12月になると、親は完全に力尽きて枯れます


でも、10月に蓄えた栄養は根にしっかり残っていて、春をじっと待ちます。


春、そしてまた立茎へ

2月〜3月、地温が上がってくると、根から新しいアスパラが一斉に顔を出します。
これが「春アスパラ」、夏に採れるアスパラよりも緑色が濃くて一番美味しい季節と言われます。

ただし、根の栄養は無限ではありません。
そのまま放っておくと、芽が出なくなってしまいます。

だからこそ、4月になると再び「親」を育てるための「立茎」が始まるのです。


実は“多年草”なんです

このようにアスパラガスは、**「親を育て → 子を収穫 → 親を作る」**という
サイクルを1年かけて繰り返しています。

ぱっと見は1年草(毎年種まきがいる)のようですが、実は多年草(根が生きていれば植え替えはいらない)で、名人級の方は同じ株を20〜30年育て続けることもあります。

土の管理、親の体力の見極めなど、職人的な要素が強い作物なんです。


今と昔の違い

アスパラガスは、私が農業に関わり始めた7年前
儲かる野菜」として注目され、補助金も多く、新規就農者に人気がありました。

でも現在は、やや下降気味

  • 労力がかかる
  • 夏の暑さが年々酷くなり、それに伴い収量減の傾向にある。
  • 資材高騰で初期投資がどんどん大きくなっている。

など、なかなか昔よりかは栽培が難しくなっている作物です。
またこのあたりのリアルな話は、また別の機会に。

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